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株式会社 At Marvelousアットマーベラス

コラム

ささげ業務を外注せず社内で回している理由 — 撮影・採寸・原稿の内製ライン

ささげ業務(撮影・採寸・原稿)は外注すべきか、社内で回すべきか。14の販路を並行運営する中小アパレルECが、代行の見積もりを取ったうえで内製に残した工程と、外注に出したほうが早い工程を、現場の詰まりどころから整理しました。代行料金の見方も併せて解説します。

「ささげ、どうされてますか」と聞かれて、一瞬なんの話か分からなかったことがあります。

豆の話ではありません。EC業界でいうささげ業務は、撮影・採寸・原稿の頭文字を取った言葉です。商品が倉庫に届いてから、モールの商品ページに並ぶまでのあいだにある工程を、まとめてこう呼びます。

私たちは14の販路でアパレルを販売していて、この3工程は今のところ社内で回しています。外注しない主義というわけではなく、実際に代行の見積もりを取ったこともあります。そのうえで社内に残した、というのが正確なところです。

この記事では、ささげ業務のどこが詰まるのか、なぜ私たちが内製を選んだのか、そしてどういう条件なら外注したほうが早いのかを、現場の目線で整理します。代行を検討していて料金の見方が分からない、という方にも役立つように書いたつもりです。

ささげ業務とは — 撮影・採寸・原稿の頭文字

改めて整理すると、ささげ業務は3つの工程の集合です。

  • 撮影(さ): 商品単体のカット、着用カット、素材の接写。背景を白に飛ばす加工まで含むことが多い
  • 採寸(さ): 着丈・身幅・肩幅・袖丈などを実測し、サイズ表の数字にする
  • 原稿(げ): 商品名、商品説明、素材表記、コーディネート提案などの文章制作

言い換えると、倉庫に積まれた段ボールを、ECサイトに載せられる商品情報へ変換する工程です。物流でも販促でもない、そのあいだにある作業なので、担当が曖昧なまま誰かの残業に吸収されがち、というのが多くの現場で起きていることだと思います。

なぜこの3つがひとまとめの言葉になっているのか

3つとも、同じ1点の商品に対して、同じタイミングで発生するからです。

新しい商品が入荷したとき、撮影だけ終わって採寸が終わっていない状態では出品できません。原稿だけできていても写真がなければページは作れない。3つ揃って初めて1点が販売可能になるので、実務上は分けて管理する意味が薄いのです。

裏を返すと、3つのうち1つが遅れると、その商品は1点も売れないということでもあります。ここがささげ業務の怖いところで、在庫は倉庫にあるのに売上がゼロという期間が発生します。

売上とクレームの両方に直結している

ささげ業務の品質は、2つの方向に効きます。

ひとつは購買意欲です。写真のクオリティと商品説明の情報量が、そのまま検討段階の離脱率に出ます。実店舗と違って試着ができないので、お客さまは画像と数字とテキストだけで判断するしかありません。

もうひとつは返品とクレームです。特に採寸は、数字が1cmずれるだけで「サイズが違う」という理由の返品を生みます。アパレルECの返品理由はサイズ起因が上位を占めるので、採寸の精度は送料と再検品コストに直結します。

つまりささげ業務は、売上を作る工程であると同時に、コストを防ぐ工程でもあります。

代行の見積もりを取ったうえで、社内に残した3つの理由

外注を検討したことは何度かあります。実際に見積もりも取りました。それでも社内に残しているのは、工程ごとに理由が違います。

撮影 — 撮り直しの頻度が、外からは見えない

見積もりの段階では「1点あたりいくら」で計算できます。ところが実際の現場では、一度で決まらない撮影がそれなりの割合で発生します

素材の質感が思ったより出ない、色が実物と違って見える、シワが目立つ、トルソーの支柱が写り込んでいる。こういうものは撮ってみて初めて分かるので、事前の見積もりには入りません。

社内にラインがあると、気づいた時点で撮り直せます。倉庫に商品があって、撮影する人がその場にいるからです。外注していると、この「撮り直しますね」の1往復に日数がかかります。単価ではなくリードタイムのほうが、私たちにとっては効きました。

採寸 — 数字のブレが、そのまま返品になる

採寸は一見もっとも外注しやすい工程です。決まった箇所を測るだけなので、マニュアル化しやすい。

ただ実際にやってみると、どこを測るかの解釈が人によって違います。着丈を肩の高い位置から測るのか、肩ひもの付け根から測るのか。同じブランドの同じ型でも、測り方が変わると数字が変わります。

私たちは14の販路に同じ商品を出しているので、サイズ表記のブレは全モールに同時に伝播します。1箇所直して済む話ではありません。この一貫性を保つコストを考えると、測る人が固定されている状態のほうが結果的に安い、という判断になりました。

原稿 — モールごとに書き分けが必要だった

これが一番、外注の見積もりと実態が合わなかった工程です。

商品説明は1本書けば使い回せる、と考えるのが自然だと思います。実際には、モールごとに文字数制限も、使えるタグも、検索の効き方も違います。モール内SEOの観点で商品名に入れるべきキーワードも販路によって変わりますし、そもそも同じ言葉が別のモールでは禁止表現だったりします。

このあたりの仕様差は画像でも同じことが起きていて、別記事の 商品画像のサイズ・規定・更新経路が9モールで全部違った に詳しく書きました。原稿も構造は同じです。

外注する場合、この仕様差の一覧を先方に共有し、更新のたびに同期する必要があります。その運用コストを含めて考えると、社内で書いたほうが速い、というのが今の結論です。

なお原稿については、たたき台を作る部分だけは機械に寄せています。ゼロから書き起こす時間は減りましたが、最終的にどの言葉を選ぶかは人が判断しています。仕様差の判断が要る工程なので、そこは委ねていません。

それでも外注したほうが早いケース

ここまで内製の話を書きましたが、外注が明確に有利なケースもあります。私たちの判断が誰にでも当てはまるわけではなく、メリットとデメリットは自社の条件で入れ替わります。

入荷が季節で山になる場合は、外注のほうが合理的です。年に2回だけ大量に入荷するようなブランドで、そのために撮影スタッフを通年で抱えるのは無理があります。波のある業務は外に出したほうが総コストは下がります。

販路が1〜2つに絞られている場合も外注向きです。書き分けが発生しないので、原稿を一度作れば使い回せます。私たちが内製に寄せた理由の多くは「14販路ぶんの仕様差」から来ているので、販路が少なければこの負荷はほぼ消えます。

モデル撮影が必要な場合も、外注のほうが現実的です。モデルの手配、スタジオ、ライティング、ヘアメイクまで揃える必要があり、この規模の設備を自社で持つ判断は簡単ではありません。私たちも着用イメージが必要な商材では外部の力を借りています。

要は、変動が大きい工程・専門設備が要る工程は外へ、一貫性が要る工程は内へ、という切り分けです。同じ考え方を物流でも使っていて、こちらは アパレル物流代行はどこまで任せる?中小ECが現場で引いた6つの境界線 に整理しています。

ささげ業務の代行料金は、どこを見ればいいか

代行を検討するなら、見積書の単価より先に、単価に含まれない範囲を確認したほうがいいと思います。私たちが見積もりを比べたときに、差が出たのは以下の項目でした。

撮影のカット数。1点あたりの料金が、何カットまでを含むのか。正面だけなのか、背面・接写・ディテールまで入るのか。アパレルは1点あたりのカット数が多くなりがちなので、ここで総額が数倍変わります。

加工の範囲。背景の白飛ばしが標準に入っているか、色補正はどこまでやるか。ここが別料金になっている見積もりは、後から積み上がります。

撮り直しの扱い。何回まで無償か、誰の判断で撮り直しになるのか。前述のとおり撮影は一度で決まらないことがあるので、この条項が実質的な単価を決めます

採寸箇所の数と定義。何箇所測るのか、測り方の定義書はどちらが用意するのか。定義を自社で作る前提なら、その作成工数も自社側のコストです。

原稿の文字数とモール対応。何文字までか、複数モールぶんの書き分けを含むのか。ここが「1本のみ」なら、販路の数だけ自社で書き足すことになります。

納期と、繁忙期の納期。通常時の納期だけでなく、入荷が重なる時期にどうなるかを聞いておくといいと思います。ささげが遅れると販売開始が遅れるので、納期は単価と同じくらい重要な条件です。

料金の相場そのものは商材とカット数で大きく変わるため、一般的な数字を挙げてもあまり意味がありません。自社の商品1点を実際に投げて見積もりを取るのが、いちばん早い比較方法だと思います。

内製ラインは、持っていること自体が資産になる

社内でささげを回し続けて気づいたのは、これが単なるコスト部門ではなかったということです。

撮影・採寸・原稿を自分たちでやっていると、商品の情報が最初に社内に溜まります。どの素材が写真で映えないか、どのサイズ表記で返品が増えるか、どの言葉で検索から人が来るか。外注していると、このノウハウが社外に溜まります。コスト削減だけを見て外に出すと、効率化と引き換えに判断の材料を失うことがある、というのが実感です。

もうひとつは速度です。売れ行きを見て「この商品は写真を変えたほうがいい」と判断したとき、その日のうちに撮り直して差し替えられます。改善のサイクルを外部の納期に縛られずに回せるのは、販路が多いほど効いてきます。

そして結果的にもうひとつ増えたのが、同じラインを他社さんの商品にも使えるようになったということでした。自社商品のために作った撮影と検品の体制なので、稼働に余裕がある時期には外部からお預かりした商品も同じ手順で流せます。私たちが物流や卸のご相談を受けられるようになったのも、元をたどれば自社のためのラインを作ったことが出発点です。

内製化の話は、突き詰めると「どこまで自分たちの手を残すか」という設計の話だと思っています。全部やるでも全部任せるでもなく、工程ごとに線を引く。その線の位置は、販路の数と入荷の波と、社内に何を溜めたいかで決まります。

よくある質問

Q. ささげ業務とは何の略ですか

撮影・採寸・原稿の頭文字です。商品が入荷してからECの商品ページに掲載できる状態になるまでの、情報を作る工程をまとめて指します。読み方は「ささげぎょうむ」で、豆のささげとは関係ありません。

Q. アパレル以外でも必要ですか

必要です。ただしアパレルは採寸の比重が特に大きい点が特徴です。雑貨や食品でも撮影と原稿は発生しますが、サイズ違いによる返品リスクが低いぶん、採寸工程の設計はアパレルほど重くなりません。

Q. 代行に出す場合の相場はどのくらいですか

商材とカット数で大きく変わるため、単純な相場を出すのは難しいところです。前述のとおり、カット数・加工範囲・撮り直しの扱い・原稿の書き分けの4点で総額が大きく動くので、自社商品1点で実際に見積もりを取って比較するのが確実です。

Q. 自社でやる場合、最低限なにが必要ですか

撮影スペース、照明、背景、カメラ、そしてメジャーと採寸箇所の定義書です。機材以上に効くのが定義書のほうで、これがないと担当が変わった瞬間に数字がぶれます。私たちも最初にここでつまずきました。

Q. 内製と外注、どちらから始めるべきですか

販路が1〜2つで入荷に波があるなら外注から、販路が多くて継続的に入荷があるなら内製から検討するのが自然だと思います。判断軸は単価ではなく、書き分けの量とリードタイムです。

ささげが詰まっているなら、工程の棚卸しから

ささげ業務は、担当が曖昧なまま誰かの手元に溜まりやすい工程です。そして詰まった瞬間に、在庫があるのに売上が立たない状態を作ります。

私たちは14の販路を運営しながら、撮影・採寸・原稿を社内に残し、季節の波と専門設備が要る部分は外に出す、という線を引いてきました。同じ線が御社に当てはまるとは限りませんが、工程ごとに分けて考えると判断しやすくなるのは共通だと思います。

自社の商品を扱いながら組み上げた撮影・検品・出荷のラインは、外部からお預かりする商品にも使っています。ささげ業務や物流の切り分けでお困りのことがあれば、事業案内をご覧いただくか、お問い合わせからお気軽にご相談ください。現場を回している立場から、率直にお答えします。