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株式会社 At Marvelousアットマーベラス

コラム

欠品率を追うのをやめた — EC在庫管理を「在庫0日数」で測り直した話

欠品率を計算しても、現場では次にやることが決まりませんでした。多SKU・多モールのEC在庫管理では欠品が常態で、率にすると全品番が「欠品あり」に潰れてしまうからです。指標を「在庫0日数×SKU」に変えて1,356品番を測り直した過程と、損失金額の推定をあえて入れなかった理由を書きました。

先月の欠品率を出してみたら、91%でした。

正確に書くと、1ヶ月のあいだに1日でも在庫がゼロになったSKUを持つ品番が、1,356品番のうち1,231品番あった、という意味です。数えたのは自社の実データで、集計期間は28日間、対象は8,837SKUです。

この数字を見て、最初に思ったのは「で、明日から何をすればいいんだろう」でした。

91%が悪い数字なのは分かります。ただ、どの商品から手を付けるのかが、この数字からは一切出てこないのです。改善したかどうかも分かりません。翌月に88%になったとして、それが良くなったのか、たまたま入荷のタイミングが重なっただけなのか、区別がつかない。

結局のところ、私たちは欠品率を追うのをやめました。代わりに「そのSKUが何日間、どこでも買えない状態だったか」だけを数えることにしました。この記事は、ECの在庫管理でなぜ率をやめて日数にしたのか、そして測り方を変えたことで何が見えるようになったのかの記録です。

欠品率を計算したら91%だった

まず、なぜこんな数字になるのかから書きます。

私たちはアパレルを14の販路で販売しています。1つの商品には色とサイズがあるので、1品番がだいたい10〜100のSKUに分かれます。冒頭の8,837SKUという在庫数は、そうやって展開した結果です。

そしてアパレルは、色サイズが均等に売れません。同じ商品でも、Mの黒だけが先に無くなります。追加で発注をかけても、生産と輸送のリードタイムのあいだは在庫ゼロのままです。

つまり多SKUの商材では、どこかのSKUが欠品している状態が常態なのです。全SKUが常に在庫ありという状態は、保管コストを度外視して過剰在庫を抱えでもしない限り、基本的に発生しません。

率にすると、全部が赤になる

この構造のまま「1つでも欠品SKUがある品番」を数えると、当然ながらほぼ全品番が該当します。それが91%という数字の正体でした。

指標としては機能していません。全部が該当する指標は、優先順位を作れないからです。健康診断で全員が要再検査と出るようなもので、そこから先の判断に使えません。

分母を変えてSKU単位で計算しても、事情はあまり変わりませんでした。率が低く出るぶん見栄えは良くなりますが、やはり「どのSKUから手を付けるか」は出てきません。率という形にした時点で、個々の事情が平均に吸収されてしまうのです。

一般的な欠品率の計算式と、現場で欲しかったもの

一般に欠品率は、欠品件数 ÷ 総受注件数、あるいは欠品SKU数 ÷ 総SKU数で計算します。前者は「お客さまの注文をどれだけ取りこぼしたか」、後者は「品揃えのうちどれだけ欠けているか」を見る指標です。

どちらも指標としては正しいのですが、私たちが知りたかったのはそこではありませんでした。知りたかったのは、買えない状態がどれだけ続いたかです。

1日で解消した欠品と、3週間放置された欠品は、まったく別の事象です。ところが率はどちらも同じ「1件の欠品」として数えます。この2つを区別できない時点で、私たちの用途には合っていませんでした。

EC在庫管理で「率」が効かない3つの理由

率をやめた理由をもう少し分解すると、3つあります。どれもEC特有というより、多SKU・多販路の運用に特有の事情です。

1. SKU単位で見ないと、欠品が見えない

品番単位の在庫数を見ていると、欠品は見つかりません。10SKUのうち3SKUが在庫ゼロでも、残り7SKUに在庫があれば、品番の合計在庫数はプラスだからです。

商品ページ自体は表示されているので、管理画面を眺めていても異常には見えません。ところがお客さまから見ると、自分のサイズだけが選べない状態になっています。ここは合計値では絶対に検出できないので、SKU単位のデータを持つところから始める必要がありました。

2. モールごとに在庫の見え方が違う

私たちの商品は、自社倉庫の在庫だけでなく、モール側の倉庫に預けているぶんもあります。預け在庫がある販路では、自社倉庫がゼロでもそのモールでは買える状態が続きます。逆に、自社倉庫に在庫があってもモールへの反映が遅れていれば買えません。

この差があるので、「在庫ゼロ」を1つの数字で表せません。私たちは在庫データを販路ごとに列を分けて持つことにして、自社倉庫の在庫と、モールに預けている在庫を別々に記録しています。一元管理といっても、1つの数字に潰すことではない、という整理です。

モールごとの仕様差がこうやって運用に効いてくる話は、商品画像のサイズ・規定・更新経路が9モールで全部違った にも書きました。在庫でも同じことが起きています。

3. 分母が動く

これは地味ですが、実際にいちばん困った点です。

率を出すには分母が要ります。ところがSKUは毎月増えたり減ったりします。販売終了した商品を分母に残すと欠品率は勝手に悪化しますし、外すと前月と比較できません。

さらに、データが取れなかった日もあります。私たちの在庫スナップショットは倉庫のPCで毎日取得しているのですが、その端末が止まっていた日は記録がありません。この日を「在庫あり」として扱うのか「不明」として扱うのかで、率は簡単に動きます。

指標が運用の都合で動いてしまうと、改善したのか記録が変わっただけなのかが判別できません。ここが率をやめる決め手になりました。

指標を「在庫0日数」に変えた

そこで、率をやめて日数にしました。集計するのは次の内容だけです。

  • 観測できた日数(記録が無い日は分母から外す)
  • SKUごとに、在庫がゼロだった日数
  • ゼロが連続していた区間(何月何日から何月何日まで)
  • その期間の受注点数と、どの販路で売れたか

率にしません。合計もしません。SKUごとの日数を、そのまま並べます

並べ方だけは決めていて、「在庫ゼロだった日数の合計 × 期間中の受注点数」の大きい順にしています。売れている商品が、長く買えない状態だったものほど上に来る、という並びです。売れていない商品がずっと在庫ゼロでも上には来ません。それは在庫の問題というより、そもそも需要の問題だからです。

実例1: 5色が同じ日に尽きて、17日間どこでも買えなかった

ある品番は5色展開で、卸の取引先が1日のうちに各色2点ずつ購入していきました。それで全色の在庫が尽きました。

このとき何が起きたかというと、翌日から17日間、5色すべてが全販路で購入できない状態になりました。観測できた18日のうち15日がゼロです。商品ページは生きていて、検索結果にも出ていて、広告も止めていない。それでも買えません。

品番単位の在庫数を見ていたら、この状態は「在庫ゼロ」の一言で終わっていたと思います。日数で並べたことで、17日という長さが数字として残りました。

実例2: いちばん押している品番の47SKUが、1ヶ月まるごとゼロだった

もう1つは、100SKUを展開している主力商品です。社内の販売指示では最優先で押す区分に入れていて、その月の受注は269点ありました。売れている商品です。

ところが在庫を日数で数えると、100SKUのうち47SKUが、月間のほぼ全期間ゼロでした。ゼロだった日数の合計は803日です。

これは正直こたえました。いちばん力を入れて売っている商品の、半分近いサイズが、1ヶ月間ずっと買えなかったということだからです。しかも売れているので、受注データだけ見ていると好調に見えます。広告も出ていますし、検索順位も悪くありません。在庫を別の軸で見ない限り、この状態は好調としか映りません。

施策を打つ側と在庫の実態が噛み合っていないと、露出を増やすほど、買えないお客さまを増やすことになります。この構造が見えたのが、測り方を変えていちばん大きかった収穫でした。

損失金額の推定は、あえて入れなかった

在庫切れの話をするとき、たいていは「機会損失いくら」という金額に換算します。私たちも最初はそうしようとしました。売れていたペースを在庫ゼロの日数に掛ければ、逃した売上が出せるはずだ、と考えたわけです。

結論から言うと、入れないことにしました

推定式を疑われた瞬間、数字ごと捨てられる

金額を出すには、いくつも仮定を置く必要があります。在庫があれば同じペースで売れ続けたと仮定していいのか。買えなかったお客さまが別の色を買った(社内で代替が起きた)ぶんはどう扱うのか。セール期間の売れ方を通常期に伸ばしていいのか。

どの仮定も、それなりに反論できます。そして仮定に1つでも疑問符が付くと、その数字は会議で使われなくなります。「その計算、代替を引いてないよね」の一言で、集計に費やした労力ごと無効になる。これが怖いところでした。

一方で「このSKUは17日間ゼロだった」は、記録がある限り誰も否定できません。事実は反論されないので、判断の土台として残り続けます

事実を出す係と、判断する係を分ける

そこで役割を分けました。集計するツールは事実だけを出す。損失の推定も、除外の判断も、発注するかどうかも入れない。それは読む側の仕事にする、という線の引き方です。

同じ在庫ゼロでも、意味はまったく違います。販売終了した商品ならゼロで正しい。新色の入荷待ちなら発注済みで待つだけ。定番商品が切れているなら、それは対処が必要です。この判断には商品の背景を知っている必要があって、集計ツールには分かりません。

無理に自動化しようとして判断を焼き込むと、その判断が外れたときに数字ごと信用を失います。判断を人に残したのは、ツールを長く使い続けるための設計でした。

社内ツールをこういう方針で作っている話は、ネットショップ運営を外注せず内製化した話 にも通じるところがあります。

週次で、月曜の朝に届く形にした

測り方が決まってからは、運用に載せる作業です。

現在は週に1回、月曜の朝に集計が自動で走り、先週1週間ぶんの結果が届きます。届くのは、在庫ゼロがあった品番の一覧と、SKUごとの日数と区間だけです。手作業での集計はありません。

週次にしたのは、日次だと反応できないからです。 毎朝届いても、発注のサイクルがそれより長いので見なくなります。逆に月次だと、気づいたときには1ヶ月経っています。発注の判断ができるタイミングに合わせると、週次が現実的な間隔でした。

もうひとつ決めたのは、上位30件しか出さないことです。1,231品番ぶんのリストを毎週送っても読まれません。「売れているのに長く買えなかった」順の上位だけを見て、そこから先は必要に応じて個別に引く、という形にしました。個別に引くほうは、品番と期間を指定すればその場で結果が出ます。

在庫のデータそのものは、受注管理システムから毎日CSVで吐き出して蓄積しています。この蓄積が無いと過去に遡って日数が数えられないので、まず毎日記録するところから始めました。リアルタイムに在庫数を把握する仕組みは前からありましたが、現在の在庫数を見る仕組みと、過去にいつ在庫が無かったかを見る仕組みは別物です。この2つを混同していたのが、そもそも欠品を数えられていなかった理由でした。

出荷まわりの業務を似た考え方で分解した話は、受注管理システムを入れても出荷作業は自動化されない に書いています。

よくある質問

Q. 欠品率の計算式を教えてください

一般的には 欠品件数 ÷ 総受注件数(受注ベース)、または 欠品SKU数 ÷ 総SKU数(在庫ベース)で計算します。どちらを使うかは目的次第で、取りこぼした注文を見たいなら前者、品揃えの欠けを見たいなら後者です。ただし本文に書いたとおり、多SKUのアパレルでは後者がほぼ常に高い値になるため、優先順位を決める用途には向きません。

Q. 安全在庫と適正在庫の違いは何ですか

安全在庫は、需要の変動や入荷の遅れに備えて持っておく最低限の在庫です。適正在庫は、安全在庫に加えて通常の販売サイクルで回るぶんまで含めた、あるべき在庫量を指します。安全在庫は「これを割ったら欠品リスクが立ち上がる下限」、適正在庫は「持ちすぎでも少なすぎでもない水準」と考えると整理しやすいと思います。

Q. 安全在庫と発注点の違いは何ですか

発注点は、発注をかけるタイミングを在庫数で表したものです。安全在庫が「常に残しておきたい量」なのに対し、発注点は「ここまで減ったら発注する量」なので、通常は発注点 = リードタイム中に売れる見込み量 + 安全在庫になります。安全在庫だけ決めても、リードタイムを考慮しないと間に合いません。

Q. 在庫回転率の目安はどれくらいですか

商材によって大きく違うため、業界平均との比較にはあまり意味がないと考えています。アパレルはシーズン性があるので、年間の平均より同じ月の前年比で見るほうが実態に合います。他社の目安を探すより、自社の過去データと比べるほうが判断に使えます。

Q. 在庫0日数はどうやって集計すればいいですか

毎日の在庫スナップショットをSKU単位で保存しておき、在庫数がゼロだった日を数えるだけです。特別な仕組みは要りません。要点は3つで、SKU単位で持つこと記録が無い日を分母から外すこと、そして販売終了したSKUを除外できるようにしておくことです。この3つが無いと、数字が運用の都合で動いてしまいます。

Q. 在庫管理システムを入れれば解決しますか

現在の在庫数を正確に把握する目的であれば、システムの導入は有効だと思います。ただし多くの在庫管理システムは現在の状態を管理するもので、過去にいつ在庫が無かったかの履歴を残す設計にはなっていないことがあります。導入を検討する際は、履歴を蓄積できるか、CSV等で日次データを外に出せるかを確認しておくと、後から測り直しができます。

測れないものは、改善もできない

欠品率91%という数字は、間違ってはいませんでした。ただ、次にやることが決まらない数字でした。

指標を日数に変えて分かったのは、いちばん押している商品の半分近いサイズが1ヶ月買えなかった、という具体的な事実です。この形になって初めて、発注をどう変えるかという話ができるようになりました。測り方を変えただけで、在庫管理の改善が動き出したというのが、正直な実感です。

もし今、ECの在庫管理で「数字は出るけれど次の打ち手が決まらない」という状態にあるなら、指標そのものを疑ってみる価値はあると思います。率を細かくするより、事実の粒度を上げるほうが早いことがあります。

私たちは自社の商品を14販路で売りながら、在庫と物流の仕組みを社内で組み上げてきました。同じラインを、外部からお預かりする商品の保管・出荷にも使っています。在庫の見える化や物流まわりの設計でお困りのことがあれば、事業案内をご覧いただくか、お問い合わせからお気軽にご相談ください。現場を回している立場から、率直にお答えします。