コラム
LINE勤怠管理は無料で作れる? 市販システムと比べた、7人の会社の本当のコスト
スタッフがいつものLINEに「出勤」「退勤」と送るだけの勤怠管理を、Google Apps Scriptとスプレッドシートで自作して16か月。1人月額200〜500円が中心の市販の勤怠管理システムと、費用・導入・機能・データの置き場・保守で比べ、道具代がほぼ0円でも残るコストと、自作が合う会社・合わない会社を実データで整理しました。
私たちの会社では、スタッフがいつものLINEに「出勤」「退勤」と送るだけで勤怠が記録されます。2025年6月に始めて、この記事を書いている時点で約16か月。今打刻しているのは役員1名・社員2名・パート4名の7名で(これまでに使った人は8名)、2026年8月末までの記録は1,653人日になりました(1人が1日に1回でも打刻した日を1人日と数えています)。
仕組みは自作です。LINE公式アカウントで受け取り、Google Apps Script(GAS)で処理して、Googleスプレッドシートに記録しています。勤怠管理システムの月額料金は払っていません。
こう書くと「LINEの勤怠管理は無料で作れるんですね」と言われます。道具代だけなら、ほぼ0円なのは本当です。ただ、市販の勤怠管理システムと並べて比べてみると、7人規模の会社なら月額料金の差は思ったより小さく、本当のコストは別の場所にあることが分かりました。
この記事は、LINEで勤怠管理を自作した会社が、市販システムと何が違って、どこにお金と手間がかかっているのかを整理した記録です。
LINEで勤怠管理を始めた理由 — LINE WORKSではなく「いつものLINE」
「LINE 勤怠管理」で検索すると、上位に出てくるのはLINE WORKSと連携する市販の勤怠管理システムの紹介がほとんどです。LINE WORKSは仕事用のチャットサービスで、スタッフには別のアプリを入れて、会社のアカウントでログインしてもらうことになります。
私たちが使っているのは、個人のスマホに最初から入っているLINEです。会社のLINE公式アカウントを友だち追加してもらい、そこに「出勤」「退勤」と送ってもらう。スタッフが新しく覚えることは、ほぼありません。
これを選んだ理由は単純で、パートさんを含めて全員がすでに毎日使っているアプリだったからです。ICカードの打刻機を置くほどの人数ではなく、新しいアプリのIDとパスワードを配って、使い方を説明して、忘れたら再発行して……という手間をかけるのも現実的ではありませんでした。
仕組みの全体像:LINE公式アカウント→GAS→スプレッドシート
構成は3つの部品だけです。
- LINE公式アカウント:スタッフが「出勤」「退勤」を送る入口
- Google Apps Script:メッセージを受け取り、LINEのユーザーIDを従業員名に変換して、日時と一緒に記録する
- Googleスプレッドシート:打刻の記録と、そこから自動で集計される日別のタイムカード
専用のサーバーは使っていません。GASは会社のGoogleアカウントの中で動くので、記録はすべて自社のスプレッドシートに残ります。サービスの管理画面にしかデータが無い、という状態になりません。
スタッフの操作は「出勤」「退勤」のボタンを押すだけ
出退勤のときにスタッフがやることは、会社のLINE公式アカウントを開いて、画面下のメニューにある「出勤」「退勤」のボタンを押すことだけです。押すと「出勤」「退勤」の文字がそのまま送られ、「おつかれさまです!」「記録しました!」と返事が届いて完了です。

メニューには「出退勤について イレギュラーあれば こちらからコメント」という欄も置いています。打刻を忘れた、押し間違えた、という連絡は、同じトーク画面から送ってもらいます。スタッフが別の連絡手段を探さなくて済むようにするためです。
位置情報や写真つきの打刻は、私たちの働き方では必要なかったので入れていません。
押し間違いは、必ず起きる前提で決めておく
運用してみて最初に分かったのは、押し間違いは必ず起きるということでした。2026年8月末までの1,653人日を数えると、1日に「出勤」が2回以上記録された日が17日、「退勤」が2回以上記録された日が14日ありました。退勤のつもりで出勤を押した、二度押しした、早めに退勤を押したあとも仕事を続けた、といったケースです。
これを毎回、人が見つけて直すのは大変です。そこで「出勤はその日の最初の打刻、退勤はその日の最後の打刻を採用する」とルールを決めて、集計の仕組みに組み込みました。こうしておくと、二度押しや、早めに退勤を押したあとも仕事を続けた日があっても、出勤と退勤の時刻の扱いがそろいます。退勤のつもりで出勤を押した日のように、ルールだけでは直せないものもあるので、それは次に書く毎朝のチェックで見つけて、人が直しています。
管理する側は、一覧と通知と毎朝のチェック
管理者側には、次の4つを用意しています。
- 日別の一覧:スタッフ別・日付別に、出勤・退勤・今の状態が並ぶ
- 退勤忘れのお知らせ:出勤から10時間たっても退勤がない人を、3時間おきに確認して管理者に通知
- 打刻の異常チェック:退勤なし・出勤なし・重複・時刻の逆転などを、毎朝まとめて確認
- あとから補正:打刻忘れは人が確認してから記録を1行足す。足した記録も残る
自動で全部直すのではなく、おかしいものを見つけるところまでを自動化して、直すのは人という分担にしています。
市販の勤怠管理システムと比較表で並べる
ここからが本題です。市販の勤怠管理システムと、私たちの自作の仕組みを並べます。
市販の料金は、1人あたり月額200〜500円が中心
市販の勤怠管理システムの多くはクラウド型で、料金は従業員の人数に応じた月額料金です。各社の公開料金や比較サイトの料金表を見ると、1人あたり月額200〜500円程度が中心で、1人300円の定額制が代表的な価格帯です。初期費用無料のサービスが多い一方で、月の最低利用料金を設けているサービスもあります。
これを私たちの規模に当てはめると、7人×300円で月2,100円、年間でおよそ2万5千円です。
正直に書くと、費用だけで比べるなら、市販のほうが安く済むケースも多いと思います。この金額で、打刻・集計・申請・承認・シフト・アラートまでそろい、法改正への対応もサービス側がやってくれるからです。
自作の道具代は、ほぼ0円
一方、自作の仕組みの道具代はこうなっています。
- LINE公式アカウント:無料のコミュニケーションプランは月200通まで配信できます。打刻への返事は、届いたメッセージに返す「応答メッセージ」(Messaging APIのReply API)で送っていて、これは無料メッセージの通数に数えられません。何人が何回打刻しても、LINEの料金は増えません
- Google Apps Script:Googleアカウントの中で動くので、追加料金はかかりません
- Googleスプレッドシート:同じく追加料金なし
つまり「LINE勤怠管理は無料で作れるか」への答えは、道具代としてはYESです。人数が増えても料金は増えません。
比較表
| 比べる点 | 市販の勤怠管理システム | LINE+GASの自作 |
|---|---|---|
| 月額料金 | 1人200〜500円程度(人数に比例) | ほぼ0円(人数に比例しない) |
| 導入の手間 | 契約して設定すればすぐ使える | 仕組みを作る手間がかかる |
| スタッフの操作 | 専用アプリ・ICカード・ブラウザなど | いつものLINEでボタンを押すだけ |
| 機能の幅 | 申請・承認・シフト・残業の管理など全部入り | 必要なものだけを作る |
| 自社ルールへの合わせ方 | 設定できる範囲まで | 締め日・端数・雇用区分まで自由 |
| 勤怠データの置き場 | サービスの中 | 自社のスプレッドシート |
| 法改正・料率の更新 | サービス側が対応 | 自分たちで直す |
| 困ったときの相談先 | サポート窓口 | 作った人 |
表にすると分かるとおり、月額料金の差は、自作が抱えるものと引き換えになっています。
勤怠の先:給与計算・明細・会計ソフトまでスプレッドシートで
私たちが自作を続けている一番の理由は、実は勤怠そのものより、その先の給与計算までを一続きで回せることです。
市販の勤怠管理システムは、多くの場合、給与計算ソフトと組み合わせて使います。勤怠の集計を給与ソフトに取り込み、給与ソフトで計算して明細を出す。人数が少ない会社では、この給与ソフトの費用と、2つのサービスをまたぐ手間が、勤怠システムの月額より重く感じることがあります。
給与ソフトを使わずに、給与明細と賃金台帳まで
私たちは給与ソフトを使っていません。打刻の記録をもとに、スプレッドシートで社会保険・雇用保険・源泉所得税・住民税・通勤費まで計算し、給与明細と賃金台帳をPDFで作成しています。今の形で回しているのは2026年6月分からです。
会計ソフトへは、転記表を作って照合する
会計ソフトへの自動登録まではしていません。給与計算の結果から会計ソフト用の転記表を作り、入力したあとで1行ずつ照合しています。税理士さんと確認しながら進めたい部分なので、ここはあえて人の手を残しています。
打刻の記録は、労務の裏付けにもなる
打刻が毎日スプレッドシートに残っていると、勤怠以外にも使えます。たとえば、パートさんが週20時間以上の働き方になっているか(雇用保険の加入要件にかかわります)や、有給休暇をいつ取ったかを、記録から確かめられます。紙のタイムカードでは、集計し直すだけで半日仕事になるところです。
16か月運用して分かった、自作の弱点
良いことばかり書くと、比較記事として公平ではないので、弱点も書いておきます。
集計の式の誤りに、2つの表を見比べて気づいた
一度、集計の式に誤りがありました。出勤と退勤で同じ形の式を使い回していたために、退勤の側だけ、採用する打刻が逆になっていたのです。出勤側は正しく動いていたので、長いあいだ気づけませんでした。
見つけたきっかけは、日別のタイムカードと給与明細という2つの表の数字が食い違っていたことです。この経験から、毎朝の打刻チェックとは別に、給与計算の前にもう一度チェックする二段構えにしました。市販のシステムなら、こうした式の誤りはサービス側が検証してくれています。自作では、その検証も自分たちの仕事です。
LINEの応答期限に間に合わないという警告が出る
LINEは、届いたメッセージを受け取ったらすぐに応答を返すよう求めていて、待ち時間はごく短く決まっています。私たちのGASは、記録・管理者へのメール・返事までを済ませてから応答を返す作りなので、その待ち時間に間に合わず、LINEからエラーの通知が届くことがあります。
ただし、GASはLINEが待つのをやめたあとも処理を続けるので、打刻の記録そのものは残ります。2026年8月27日〜31日に届いたエラー通知18件を打刻の記録と突き合わせたところ、18件すべてに対応する打刻が記録されていました。仕組みとしては動いていても、こうした「気にしなくていい警告」の見分けがつくのは作った人だけ、というのも自作の現実です。
また、打刻のたびに管理者へメールを送る作りにしているので、人数や打刻回数が増えると、Googleのメール送信数の上限を意識する必要が出てきます。
法改正や保険料率の更新は、自分たちでやる
社会保険や雇用保険の料率は毎年のように変わりますし、2026年4月分の保険料からは子ども・子育て支援金の徴収も始まりました。市販のサービスならアップデートを待てば済みますが、自作では自分たちで計算式を直して、正しいかを確かめる必要があります。
月額料金の差額は、つまりこの手間の代金です。
自作が合う会社・市販が合う会社
ここまでを踏まえて、向き不向きを整理します。
LINEでの自作が合う会社
- 少人数で、スタッフに新しいアプリを覚えてもらうのが難しい
- 締め日・端数・雇用区分など、市販の設定に収まらない就業ルールがある
- 勤怠だけでなく、給与計算や会計まで一続きの形で回したい
- 記録を自社の手元に置いておきたい
- 仕組みを直せる人が社内にいる、または頼める相手がいる
市販の勤怠管理システムが合う会社
- 人数が多く、申請・承認・シフトなどの機能をひととおり使う
- 法改正への対応をサービス側に任せたい
- 仕組みを保守できる人がいない
- 給与計算ソフトをすでに使っていて、その運用を変えたくない
私たちの場合は、前者の条件がほぼすべて当てはまりました。社内の業務ツールを自作してきた経緯は、気づいたら社内ツールが20個超えていた にも書いています。勤怠は、その中でも毎日全員が触る、いちばん身近なものです。
よくある質問
LINEの勤怠管理は、本当に無料で使えますか?
道具代は、ほぼ0円で作れます。LINE公式アカウントは無料プランがあり、打刻への返事を応答メッセージで送れば通数にも数えられません。GASとスプレッドシートも追加料金はかかりません。ただし、作る手間と、法改正などに合わせて直し続ける手間は残ります。自社で作れない場合は、その部分が外注費になります。
LINE WORKSの勤怠管理との違いは何ですか?
LINE WORKSは仕事用の別サービスで、スタッフには専用のアプリとアカウントを使ってもらいます。対応する市販の勤怠管理システムも多く、機能はそろっています。私たちの仕組みは、個人がいつも使っているLINEから、会社の公式アカウントに送る形なので、新しいアプリは要りません。
スプレッドシートの勤怠管理で、記録の保存は大丈夫ですか?
労働基準法では、出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録は5年間(当分のあいだは3年間)の保存が求められています。スプレッドシートに記録が残るので、消さなければ保存はできます。誰がいつ補正したかが残るようにしておくことが大切で、私たちは補正も1行の記録として足す運用にしています。
何人くらいまで回りますか?
私たちは今7名で使っていて(これまでに使った人は8名)、約16か月のあいだ人数の面で困ったことはありません。人数が増えたときに気にするのは、LINEではなく、打刻ごとに送っている管理者へのメールの送信数や、スプレッドシートの行数のほうです。数十人規模になるなら、通知の送り方を変えるなど、作りの見直しが必要になると考えています。
まとめ:比べるべきは月額ではなく、何を自分たちで持つか
LINEの勤怠管理は、道具代だけなら無料で作れます。ただ、7人規模なら市販システムとの月額の差は年間数万円で、その差は作る手間・保守・検証を自分たちで持つことと引き換えです。
逆に言えば、就業ルールに合わせて作り込みたい、給与計算まで一続きで回したい、記録を手元に置きたい、という会社にとっては、自作は十分に現実的な選択肢です。
私たちは、自社で運用しているこの仕組みをもとに、必要な機能だけを選んで、御社の就業ルールに合わせた形でつくるお手伝いをしています。「うちの勤怠と給与の流れだと、どちらが合うのか」という段階からご相談いただけます。
参考にした公開情報(2026年9月30日確認)
- LINE Developers「Messaging APIの料金」(無料メッセージ通数と、応答メッセージが通数に数えられないこと)
- 厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」(記録の保存期間 5年・当分のあいだ3年)
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」(令和8年4月分から)
- 厚生労働省(大阪労働局)「雇用保険の適用要件について」(週20時間以上)
- 市販の勤怠管理システムの料金は、各社の公式料金ページと複数の比較サイトの料金表をもとにしています